コメダ。東海地方で絶大な支持を集める喫茶店チェーンである。
ライトノベルファンのあいだでは、『冴えない彼女の育てかた』に登場する店のモデルとしておなじみだ。おお、作者の美しき地元愛。僕の詩羽先輩への愛も負けてなるものか。
……そんなコメダだが、ここ数年で、都内でもよく見かけるようになった。おかげで大好物のシロノワールが、気軽に食べられる。うれしい限り。
それは、コメダの看板メニュー。
デニッシュ生地のパイに、ソフトクリームが鎮座する。アクセントにチェリー。
これが、美味い。
とにもかくにも美味い。
美味いのだ。
食べると太る。
でも美味い。
太る。
でも美味い。
だが太る。
しかし美味い。
どうしても太る。
しかし、美味いったら、美味い。
美味いのである。
運ばれてきたら、まずはチェリーを先に食べるか、脇に避ける。そして、添えられているシロップを満遍なく回しがける。
序盤は、ほかほかのデニッシュ生地と、ひんやり冷たいソフトクリームの温度差がもたらす感覚の混乱、そこから生じる幻惑的な味わいを楽しむ。
食べ進めるうち、やがてソフトクリームは溶け、デニッシュは冷める。食材の温度差による魅惑のコンビネーションは見る影もない。至福の時間はそこで終わるのか? 答えは否。シロノワールは、そこからまた、新たな魅力を発するのだ。
液状になったソフトクリームとシロップが混ぜ合わさり、バニラの風味が濃厚な、「第二のシロップ」が皿にできあがる。それを吸水性に優れたデニッシュ生地にたっぷりと受け止めさせると、皿の上にあるすべての要素が渾然一体となった、三位一体のスイーツが誕生するのである。その味、まさに喜悦。
おお、おそるべし、シロノワール。おそるべし、コメダ。容赦なき甘味……。
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ところで、
「シロノワールってどういう意味の言葉なんだ? もしかしてソフトクリームを『シロ(白)』、デニッシュ部分を『ノワール(黒)』と見立てて、『シロ』+『ノワール』=『シロノワール』とか?」
などと、おふざけ気分で推理してみたら、大正解だった。
……真実を前に、探偵は時として立ちすくむ。